
子どもの百日咳|長引く咳・検査・治療・受診目安を小児科医が解説
子どもの咳がなかなか治らないと、「いつもの風邪なのか」「百日咳ではないか」と心配になると思います。
百日咳は、百日咳菌によって起こる急性の呼吸器感染症です。最初は鼻水や軽い咳など、かぜと区別しにくい症状で始まり、その後、発作のような強い咳が続くことがあります。
特に乳児では、典型的な咳が目立たないまま、無呼吸やチアノーゼを起こして重症化することがあります。
咳が日ごとに強くなる、夜間に激しく咳き込む、咳のあとに吐く、家族や学校・園で百日咳が確認されている場合は、早めに小児科へご相談ください。
百日咳とは
百日咳は、**百日咳菌(Bordetella pertussis)**によって起こる呼吸器感染症です。
「百日」という名前ですが、必ず100日間咳が続くわけではありません。
一方、発作的な強い咳が落ち着いてからも、咳だけが数週間以上残ることがあります。
乳幼児だけの病気ではありません。ワクチンによる免疫は時間とともに低下するため、年長児や思春期でも百日咳にかかることがあります。
百日咳の原因と感染経路
百日咳の原因は百日咳菌です。
主な感染経路は、咳やくしゃみのしぶきによる飛沫感染と、鼻やのどの分泌物が手指などを介して広がる接触感染です。
潜伏期間は通常5〜10日程度で、最大3週間程度とされています。
百日咳は、激しい咳が始まる前の「かぜのような症状」の時期から周囲に感染させる可能性があります。
家庭内や保育園、幼稚園、学校などで広がることもあります。
百日咳の主な症状
百日咳は、典型的には次のように経過します。

短い咳を連続して繰り返す咳をスタッカート、咳き込んだあとに息を吸うときの笛のような音をウープと呼びます。
ただし、すべてのお子さんに典型的な症状がそろうわけではありません。
年長児やワクチン接種済みのお子さんでは、ウープなどが目立たず、長引く咳だけの場合もあります。
百日咳では高熱が目立たないことが多く、咳が強いのに発熱がないこともあります。
百日咳の咳はどのくらい続きますか?
百日咳の咳は数週間以上続くことがあります。
抗菌薬によって百日咳菌が減っても、すでに発作的な咳が強くなっている時期では、咳がすぐに消えるとは限りません。
いったん改善しても、かぜなどをきっかけに一時的に咳が目立つこともあります。
「薬を飲んだのにまだ咳がある」というだけで、治療が効いていないと判断することはできません。
百日咳と急性上気道炎(かぜ)の違い
百日咳の初期は、一般的な急性上気道炎と症状だけで見分けることが難しい場合があります。

一般的なかぜでも咳が数週間残ることはあります。
そのため、「咳が長い」という理由だけで百日咳と診断することはできません。
咳が徐々に強くなる、夜間の咳き込みが激しい、咳のあとに吐く、周囲で百日咳が出ている、といった情報を合わせて判断します。
乳児の百日咳は特に注意が必要です
乳児、とくに月齢の低い赤ちゃんでは、百日咳が重症化することがあります。
また、年長児のような激しい咳が目立たず、無呼吸が最初の症状となる場合もあります。
次のような症状には注意してください。
- 呼吸が止まる、または止まりそうにみえる
- 唇や顔色が青紫色になる
- 呼吸が苦しそう
- ミルクや母乳が十分に飲めない
- ぐったりしている
- けいれんがみられる
ワクチン未接種または接種途中の乳児、とくに生後4か月未満では慎重な対応が必要です。
百日咳の診断
百日咳は症状だけでは診断が難しいことがあります。
診察では、
- 咳が始まった時期
- 咳の強くなり方
- 咳のあとの嘔吐
- 周囲での百日咳の流行
- 百日咳患者との接触
- 年齢
- ワクチン接種歴
などを確認します。
必要に応じて鼻咽頭から検体を採取し、百日咳菌を調べる検査を行います。
迅速抗原検査
百日咳菌の抗原を調べるイムノクロマト法による迅速抗原検査があります。
専用機器を必要とせず、約15分で結果を確認できることが利点です。
一方、迅速抗原検査だけで百日咳を完全に診断・除外できるわけではありません。
国内の報告では、核酸増幅検査を基準とした感度は86.4%程度とされていますが、検査条件や患者さんの状態によって診断性能は変わります。
また、百日咳菌に近い種類の菌との交差反応や偽陽性にも注意が必要です。
迅速抗原検査が陰性でも、症状や経過から百日咳が疑われる場合は完全には否定できません。
PCR・LAMPなどの核酸増幅検査
PCR法やLAMP法は、百日咳菌の遺伝子を調べる検査です。
現在、百日咳の病原体診断で重要な検査です。
咳が始まってからおおむね3週間以内が検査時期の一つの目安となります。
乳児やワクチン未接種児では、4週間程度まで病原体検査が有用な場合があります。
ただし、年齢、発症からの日数、抗菌薬を使用しているかなどによって検査の有用性は変わります。
培養検査と抗体検査
培養検査は百日咳菌そのものを確認できる特異性の高い検査ですが、結果が出るまで時間がかかり、発症から時間がたつと検出しにくくなります。
培養検査は、主に発症後2週間以内が適した時期とされています。
血液を使った抗体検査が診断に利用されることもあります。
ただし、年齢やワクチン接種からの期間によって結果の解釈が難しい場合があります。
百日咳では、発症からの時期によって適した検査が異なります。
検査結果だけでなく、症状、経過、接触歴などを合わせて判断することが大切です。
百日咳の治療
百日咳の治療には、主にマクロライド系抗菌薬が使われます。
かぜのような症状で始まるカタル期など、発症の早い段階で適切な抗菌薬を開始すると、症状を軽くし、周囲への感染を減らす効果が期待できます。
一方、発作的な咳が強くなった痙咳期では、抗菌薬を開始しても咳がすぐに止まるとは限りません。
それでも百日咳菌の排出を減らし、周囲への感染を防ぐため、適切な抗菌薬治療は重要です。
処方された薬は医師の指示どおり服用してください。
近年、日本国内でもマクロライド系抗菌薬が効きにくいマクロライド耐性百日咳菌が確認されています。
治療しても改善が乏しい場合などには、年齢、重症度、検査結果などを踏まえて治療内容を再検討することがあります。
代替薬には年齢による注意点があるため、自己判断で抗菌薬を変更したり中止したりしないでください。
家庭でできるケア
家庭でのケアは百日咳菌そのものを治す治療ではありませんが、咳き込みによる負担を減らすために大切です。
- 水分を少量ずつ、こまめにとる
- 咳き込んで吐く場合は、一度にたくさん食べさせない
- たばこの煙など、咳を誘発する刺激を避ける
- 十分に休ませる
- 処方された薬は指示どおり使用する
市販の咳止めだけで百日咳そのものを治療することはできません。
特に乳幼児では、市販薬を自己判断で追加せず、医師や薬剤師にご相談ください。
早めに小児科へ相談したい症状
次のような場合は、早めに小児科へご相談ください。
- 咳が日ごとに強くなっている
- 発作のように何度も咳き込む
- 咳のあとに繰り返し吐く
- 夜間の咳き込みが強い
- 長引く咳で睡眠や日常生活に支障がある
- 家族や学校・園で百日咳が確認されている
- ワクチン未接種・接種途中の乳児に咳がある
救急受診を考える症状
乳児では、咳が目立たなくても呼吸状態が悪化することがあります。
次のような症状がある場合は、速やかな医療機関への相談・救急受診を検討してください。
- 呼吸が止まる、または止まりそうにみえる
- 唇や顔色が青紫色になる
- 息苦しそうで呼吸が不安定
- ミルクや母乳、水分がほとんどとれない
- ぐったりして反応が悪い
- けいれんがある
特に月齢の低い乳児では、典型的な咳がみられないこともあります。
百日咳の登園・登校の目安
百日咳は、学校保健安全法で第二種感染症に定められています。
登園・登校の目安は、
「百日咳に特有の咳が消失していること」
または、
「5日間の適切な抗菌薬による治療が終了していること」
です。
抗菌薬を飲み始めた直後から登園・登校できるわけではありません。
病状によって医師が感染のおそれがないと判断した場合などは個別に対応します。
必要な書類については、園や学校にもご確認ください。
百日咳を予防するワクチン
百日咳の予防には、百日咳成分を含むワクチンが重要です。
現在、乳児期から開始する定期接種では、原則として**5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)**を計4回接種します。
過去に4種混合ワクチンなどで接種を開始したお子さんもいます。
接種歴によって今後の接種方法が異なることがあるため、母子健康手帳を確認してください。
ワクチンを接種していても百日咳になることがあります
百日咳ワクチンを接種していても、百日咳を発症することがあります。
ワクチンは百日咳の予防や重症化予防に重要ですが、接種後の免疫は時間とともに低下します。
そのため、乳幼児期に必要な接種を終えていても、年長児や思春期に発症することがあります。
接種済みのお子さんでは典型的なウープが目立たず、「長引く咳」だけの場合もあります。
年長児にも三種混合ワクチンの追加接種が推奨されています
日本小児科学会は、学童期以降の百日咳予防を目的として、三種混合ワクチン(DPT)の追加接種を推奨しています。

これらのDPT追加接種は、現時点では任意接種です。
就学前や11〜12歳の時期には、これまでの接種歴を母子健康手帳で確認し、追加接種について医療機関に相談してもよいでしょう。
家族に百日咳の患者がいる場合
百日咳は家庭内で感染することがあります。
特に月齢の低い乳児など、重症化リスクの高い方が同居している場合は注意が必要です。
濃厚接触者では、年齢、基礎疾患、ワクチン接種歴、接触状況などによって、予防的な抗菌薬投与が検討される場合があります。
家族が百日咳と診断され、乳児が同居している場合は、症状がなくても対応について医療機関へご相談ください。
よくある質問
Q. 百日咳はいつまで人にうつりますか?
A. 適切な治療をしていない場合、咳が始まってから約3週間は周囲に感染させる可能性があります。
適切な抗菌薬治療を開始すると感染性は低下します。
登園・登校については、「特有の咳が消失している」または「適切な抗菌薬治療を5日間終了している」ことが目安です。
Q. 百日咳でもお風呂に入れますか?
A. 呼吸が苦しくなく、普段と大きく変わらない状態であれば、入浴を一律に控える必要はありません。
激しい咳き込み、呼吸苦、ぐったりしているなどの症状がある場合は、入浴よりも休養を優先してください。
Q. 家族が百日咳になりました。症状がなくても受診した方がよいですか?
A. 家族に百日咳患者がいる場合でも、全員に同じ対応が必要とは限りません。
ただし、同居している方が乳児、妊婦、重症化リスクの高い方などの場合は、予防的な抗菌薬治療を検討することがあります。
特に月齢の低い乳児がいる家庭では、早めに医療機関へご相談ください。
横浜市西区・みなとみらいで子どもの百日咳が心配な方へ
みなとみらい小児科クリニックでは、横浜市西区・みなとみらいで、百日咳が疑われるお子さんの診療を行っています。
「咳が何週間も続いている」
「夜になると咳き込みがひどくなる」
「咳のあとに吐いてしまう」
「学校や園で百日咳が出ている」
「百日咳の検査について相談したい」
といった場合もご相談ください。
診察では、咳が始まった時期や経過、咳の特徴、周囲の流行状況、百日咳患者との接触、ワクチン接種歴などを確認します。
そのうえで、症状や発症からの日数に応じて、必要な検査や治療を検討します。
乳児の無呼吸やチアノーゼなど、重症化が疑われる場合には、状態に応じて高次医療機関と連携します。
横浜市西区・みなとみらいをはじめ、中区、神奈川区、南区など周辺地域からもご相談いただけます。
一般診療について
みなとみらい小児科クリニックでは、百日咳だけでなく、発熱、咳・鼻水、嘔吐、下痢、腹痛、発疹・湿疹など、子どもによくみられる症状について一般小児科診療を行っています。
咳の原因が百日咳なのか、一般的なかぜやその他の呼吸器感染症なのか分からない場合もご相談ください。
関連記事
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参考資料
- 厚生労働省「百日咳」
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト「百日咳」
- 国立健康危機管理研究機構「百日咳 感染症法に基づく医師届出ガイドライン」
- 国立健康危機管理研究機構「百日咳 2025年11月現在」
- 日本小児科学会「日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2026年4月1日版」
- 日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2022 百日咳に関する追補版 Ver.1.1」
- こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン」
- CDC「Pertussis(Whooping Cough)」
- WHO「Pertussis」
公開日:2026年6月27日
更新日:2026年9月15日
監修:みなとみらい小児科クリニック 院長
みなとみらい小児科クリニックへのアクセス
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です。
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お車でお越しの方は、プライムコーストみなとみらいの大型立体駐車場をご利用いただけます。
駐車場は2時間まで無料です。
発熱などでお子さんを長時間歩かせることが難しい場合や、乳幼児・ご兄弟を連れて受診される場合にも、お車でお越しいただけます。
所在地
みなとみらい小児科クリニック
〒220-0012
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お子さんの体調が心配なときは、いつでもご相談ください。
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